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はち!!
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時に五時の鐘も鳴る。
ん?五時・・・?
「もう最終下校過ぎちゃったぁ!!」
「ちょっと。うるさい」
保健室の先生とか言う人に注意された。
「すいませぇん」
今、私と会長と先生の三人で新しい保健室に向かってるんだけど・・・
(二人とも背、高くね!?)
清水みるく、女子の中では意外と背高い方だったはずですよね??
「今日はしょうがない。怪我してるし。もし見つかったらアタシが謝るから平気だよ」
え・・・?『アタシ』??
いや最近は一人称なんて男女関係ないし!! うん! きっと私の考え過ぎだ!!
ーーー
「あそこが保健室さ」
先生が真っ直ぐ指を指す。本当だ。確かに『保健室』と書かれてある。
(学校のマップ新しくしとけよな)
こちとら転生したばっかなんだからよ。
「あれれぇ、扉が開いてますけどぉ」
「あぁ、中に一人いるんでな」
でも、電気ついてませんけど・・・?
「さ、お入り」
先生が手を出してくる。
(手、めっちゃ長くて綺麗)
「うふふぅ、じゃあ」
これ、私のこと意識してるよね・・・♡
私も意識してますって手の握り方で証明してあげる!
必殺!『恋人繋g』
「待て」
パァン
先生の手に接近していた私の手は、誰かによって妨げられる。
「会長、やめてくださぁい」
今いいチャンスだったのに! これで握ったら先生意識してたはずなのにぃぃ!!
「悪い。ーー俺もなんでこんな事したかわからないが...」
「なんて言いましたぁ?」
悪い、しか聞こえなかったぞ!
「なんでもない」
「ちょっとあんた達、そこでイチャイチャしないでくれる? これを見てるこっちの身にもなりなさいよ」
あ、そうだった。先生いたんだった。
ーーー
保健室の中は新しいからか綺麗だった。全てが新品って感じ。
「そこに座りな」
先生が綺麗な手で一つの椅子を指差す。
「はぁい」
先生に言われた通り、椅子に腰掛ける。周りを見るとベッドがいっぱいあって数えたら6つ・・・
(ベッド多くないか!?)
つまりサボりやすい、と。これはメモだな。
「じゃあ先生、俺もうそろそろ帰ります」
会長はもう用は無いと感じたのか、踵を変えようとする。
「白石煌、ちょっとお待ち。あんたはここで居残りだよ」
「はい? 居残り?」
「ちょっと話したいことがあってね」
「・・・あれか。分かりました」
気になる~ ものすんごく気になる~
「そういえばぁ、先客がいたとか言ってませんでしたぁ?」
「あぁ、それなら手前のベッドにーー」
「せんせ~い、今日も私の愚痴聞いてよ・・・って」
艶のある長い黒髪。
「清水みるく!? なんであんたが!!」
「げ!! 佐藤琉芽ぇ!」
なんでいるかってこっちも聞きたいわ。
「何? あんた達知り合い? あ、ちょっと動かないでよ」
先生が呆れながら私に警告してくる。
ピリッ
「先生、痛いですよぉ・・・」
頬をぷくっと膨らませる。結構この行動重要。
「しょうがないわ。こうしないと治んないだろ?」
先生の手が、私の頬にくっつく。もう一回、ピリッと痛みが走る。
「一応絆創膏貼っといたから。触るなよ」
「先生、まだ? 早く愚痴大会開きたいんだけど」
佐藤が黒髪のロングヘアをかきあげながら、苛立ちを見せていた。
「今言っていいぞ。ちゃんと聞いてるから」
「わかった」
そうすると佐藤は顔をさっきよりイラつかせながら
「うちのクラスの鈴木? だっけ。アイツが超酷いんだよ。『俺、身長高いから』とか『お前より運動神経いいし』とかすぐにマウント取ってくんの。マジウザいんだけど。」
「あとアイツ私の隣の席なんだけど、よく教科書とか忘れるから私が見せなきゃいけないの! 本当にやめてほしいわ。この前は消しゴムも忘れやがって。」
「しかも私のことよく見てくるし。普通にキモってなるんだが。どうにかしてよ、先生!」
「先生も女子だから気持ち、わかるよね!?」
「ちょっと待ってぇ。先生って・・・」
「れっきとした女性よ。まさか、男とか思ってたわけ?ゲームでは唯一の癒しキャラだというのに・・・」
げ、ゲーム? 『いやしきゃら』って何?
「いや、いいよ。よく男だと勘違いする奴多いから。この口調とか、男っぽいもんな・・・」
「えぇ、凄くいいと思いますよぉ! カッコよくて」
「ありがとう。でも生徒達からは色々と言われるんだ」
背、めっちゃ高くない? でも高すぎてカッコいいよりかは怖いって感じ。
目つきヤバ。見下してる感w
本当にこの人って女子なの?
「・・・アタシもあんた達みたいな女になりたいの。ずっとあんた達に憧れてる」
目を伏せながら言った。先生、綺麗なのに・・・
「え、一緒ですねぇ!! みるくも先生のことぉ憧れてまぁす♡」
「こんなアタシをかい?」
そのネガティブ、治してやんよ!
「 だってぇカッコいいのに保健室の先生でぇ、悩みとかも聞いてくれて。しかもぉ治療もしてくれるぅ!! 」
「 知ってますぅ? 最近の女子は『可愛い』も『カッコいい』もぉどっちもが人気なんですってぇ」
「あと男子って背、高いですよねぇ! ちなみにキスが丁度いい身長差って15cmらしいですよぉ♡」
「 先生なら背が高いから男子達とキスぅ、しやすいかもねぇ・・・♡」
これが私の精一杯のフォロー。
「フフッ・・・フフフ! 面白いね、あんた。名前は?」
「1年よぉん! 期待の可愛さにぃ皆ぎょぉうてぇん♡♡ 清水みるくですっ♡」
「うわっ 清水みるく、更にぶりっ子化進行してない?」
うるさいぞ、佐藤琉芽。今は脳裏に焼き付けてもらうアピールタイムなんだ。
「 いいじゃん、気に入ったわ。またいつでも保健室来いよ。もっとアタシと話そーぜ 」
フッフッフ やっぱぶりっ子って好かれるんだな~ 流石は私。
「それじゃぁ みるくはここでぇ。 さようならっ♡♡」
「ほい。明日も学校だからなー 早く寝ろよ」
いやお母さんかよ。
先生が女性だからって、可愛いと思わせてやるんだからね!!
ーーー
「で、話とは?」
午後七時。保健室には女教師と生徒会長、二人しかいないからか静かだった。窓の外から蟲の泣き声が聞こえる。
「白石煌。お前に縁談の話がーー」
「お断りさせて頂きます」
即答だった。
「ちゃんと人の話は最後まで聞け。・・・いいか、今回の相手はあの鐵財閥だぞ」
「鐵財閥!?」
この世界では誰でもが知っている三大財閥の一つ、鐵財閥。結婚すると、一生豊かな生活を送れるだとか。
「今回はちゃんと出なさいと主人も言ってるんだ。話を聞いて、相槌して、笑顔でいるだけでいいからってさ」
「・・・わかりました」
どんなに抵抗しても、父上には勝てない。
だったら、従う一択のみだ。
「ていうか、なんでここまで来たんです? 家で会えるというのに」
「え、いいじゃないか。坊ちゃんの学校の生徒はどんな奴らなのか見学しにね」
「にしても面白い奴らばっかだね。特に清水みるく・・・だっけ。まさかぶりっ子で登場するとは思っていなかったよ」
「あいつ、いつもあんな感じですけど」
「ふぅん... アタシ気に入ったからさ、たまに呼び出しちゃうかもね」
煌は目を見開いていた。
「知ってるだろ? 気に入ったものは離さないっていうアタシの性格をね」
「気に入られるなんて・・・これで二人目か?」
「なんか言ったかい」
「いや。でも俺もいますから。それを忘れないでください」
「望むところだよ」
どんどん外は暗くなる。蟲の声が大きくなるなか、二人は雷を降らす前のようにバチバチと睨み合ったのだった。
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