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「 涙の卒業式 」
__「これで、令和4年度。皇中学校、校長からの話を終わります」
私たち…卒業生が、校長の言葉を合図に一斉に立ち上がる。
__「在校生の皆さんから卒業生の皆さんに感謝の気持ちを込めて」
「「「「「卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます!!」」」」」
私は、その言葉を耳にした瞬間、思わず目から涙が出てしまった。
本当は…本当は、泣くつもりなんて無かったのに。
__「そして、次に。卒業生代表として生徒会長の七海さん」
__「答辞をお願いします」
「…っ、はい!」
そう。
この卒業式で、この多くの人がいる前で答辞を読むのは私、七海星奈だ。
涙で少しぐちゃぐちゃになった顔を笑顔に変えて、ステージへと足を運ぶ。
「春の暖かな日差しが体全体に感じられ、校庭の木々の芽もふくらむ季節となりました。本日このよき日――…」
ゆっくり、的確な速さで。でも、ここにいるみんなに届くように。
__私の答辞が終盤に差し掛かり、紙から目を離した時。
ふと見えたのは泣いているクラスメイトや、目頭に涙を溜めている親友の姿。
それを見てしまった私は、また目からうっすらと水滴が。
「__本当にありがとうございました。心から感謝して答辞といたします。」
「以上、卒業生代表…兼、生徒会長の七海星奈でした」
パチパチパチ…__と会場、体育館に響くたくさんの拍手。
所々から聞こえてくる、嗚咽や「ありがとう」といった言葉。
そんなものに送られながら、壇上の上から降りていく私。
__今、卒業しました――。
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