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「桜子ちゃんはここで私と一緒に、お父様とお母様が寿命を全うされるのをお待ちしていますと、どうかぼっちゃん達にお伝えください」
そう伝言を受け取って、お竹さんは言われた道を通ってこの世に戻って来たという。
「桜子は、本当のお祖母様と一緒なのですね」
糸子は顔を覆って泣き出した。それは安堵の涙のようだった。
(姉やが、いや母が、桜子の守りをして待っていてくれる)
倫太郎は姉やの温もりを思い浮かべた。
翌春。
倫太郎はもうすぐ臨月を迎える糸子と、川沿いの桜並木を訪れた。
満開を少し過ぎ、はらはらと舞う桜は美しい。
守り桜の下で待ってくれている母がいる。
いつか会えたら、どんな言葉をかけようか……。
<了>
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