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第一話
俺は成人した時から数年間、このバルロイゼの町で毎日 朝日が落ちるまで動物店をしている。
「ではこの犬を一頭頼むよ」
「畏まりました」
貴族の男だった。
仕事柄、うちの店に来るのはいつも貴族ばかりだ。
鉄格子の檻から犬を出し、お客に引き渡す。いつものことだ。
「ルーハ殿は迷宮に興味はありますかな」
会計をする俺の手が止まった。
「迷宮ってあの迷宮、ですか?」
「ええ。多くの迷宮生物を倒せば経験値に富や名声。それに女まで全てが手に入る可能性を秘めている。それが迷宮です。」
俺は少しその貴族に圧倒された。
「見るところルーハ殿は才能がありそうだ」
「そ、そんな滅相もない。俺はそんな大した男ではありません」
少し慌てている様子を見た貴族は笑いながら言った。
「そう自分を下げてはいけませんぞ。何事も挑戦が大事です。」
会計を済ませた貴族は礼を言い去って行った。俺も無意識に深く礼をした。
それから一ヶ月後、ある事件が起こった。
この町一体で貴族の飼っていた動物が次々に死んでいったのだ。原因はどれも突然死だった。
そして、その貴族の飼っていた動物は全て、俺の動物店の動物たちだったのだ。
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