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6嘘つきママ
顔も見ていないのに、会ってもいないのに、どうしても悪い人だってママは決めつけるの?
浮気している夫に頭を悩ませている一方で、ママブログで幸せそうな嘘の日常を書いている私はリアルに幸せそうな同じカテゴリの主婦に向かい、ネットの牙を向ける。
ママ怖い顔、悪い人みたい。
この前娘に言われてカッとなり、つい「うるさい!」と足蹴にしてしまった。
まだ五歳の幼い身体が、硬く、茶色いフローリングの床に仰向けで倒れる。
血の気がさーっと引く。
痛いよおと、水っぽく泣き叫ぶ声。
片付かない食器。
散らばるおもちゃ。
何もかもイライラする、頭が痛い。
何もかも、あいつが悪いんだ。
「ママはね、悪い人をやっつけてるの!邪魔したら、あんたが連れていかれるからね!邪魔な子は助けに行かないから、そこで悪い人と暮らしなさい!」
嫌だよぉ、嫌だよぉ、と泣き叫んで足にしがみつく娘の頭を叩いた。三日前、食事の時間にぐずってフォークを投げたとき、思わずカッとなって張り飛ばしたせいで頭を柱に打ち付けたところに、小さなこぶができている。
アザも傷跡も、日に日に多くなっていく。
幼稚園には「夫の都合で」と嘘をついてしばらく行かせていないし、今更行かせても娘の口からいろいろと余計なことがバレそうで、行かせたくない。
おしゃべりになるほど、都合が悪い。
生意気に正論までかざして、むかつく。
遠足や園外学習の予定なんか、届いてもぜんぶゴミ箱行きにした。どうせ夫は仕事が忙しいからという体で滅多に帰宅しないし、向こうが浮気の相手と過ごしているほうが快適ならそれでいい。
勝手にしていい、私にはその方が嬉しい。
娘と二人の空間は、私にとって都合がいいからだ。
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