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7レントゲン
十歳になる我が家の猫がいきなり鼻と口から血を吐いたので、母があたふたと固まってしまい、落ち着いてと声をかけつつ急いでタクシーを呼び、猫をキャリーバッグへ押し込み、病院へ連れていった。
乗車してから大通りを走って三十分、設備はやや古いけれどよく調べてくれ、体質にあった治療を施してくれる動物病院は初老の眼光するどい男性の医師がいる。
母にとっては猫好きなゆえ、開業当初から知っている医師ではあり、あれでもだいぶ和やかな顔つきになったとのことだった。
私にとっては、とてもじゃないがそんなふうに思えないが......。
血液が混ざった胃液はティッシュに染み込ませ、ビニール袋に入れておいたので医師に確認してもらうと、出血量が多いから念の為にレントゲンを撮ることに決まった。
画像を確認し、医師は私と母に対し鋭く突き刺さるような、疑いの眼差しを向ける。
「失礼ですが、猫ちゃんを過剰に叩いたり、嫌がることをしたりなど、いわゆる虐待と呼ばれる行為はしていませんよね?」
失礼な、と母が憤りに任せて声を荒らげる。
感情的になるのも無理はない、家族で誰よりも猫を可愛がり、よりよい環境を与えたいと常に考えているのは他ならぬ母である。
歴代の猫はみな、母のそばから離れず、三匹同時に飼っていた時には、かれらが母のうしろで列をなしてついてくるような状況も見受けられた。
うーむ、と医師は首を傾げて口を開く。
「実は、胃の中にありえないものが入っていたため失礼を承知ではっきりとお伺いした次第です、申し訳ない。しかしこれは、手術で摘出するしか方法がないと考えられますが......」
「見せてください!」
母が食い気味に懇願すると、ええどうぞとモノクロの画像をトレース台の上に乗せ、医師は前へ行くように促す。
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