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猫の胃を撮影した画像には、医師が言う通り、ありえないものの存在が確認された。
先端が尖った、ちょうど針もしくは釘のような、細い棒状のものが、何本か重なり合っている様子が見て取れたのである。
口の中にも、無理やり飲み込まされた跡のような炎症が見受けられましたと医師が付け加える。
変わらず、私たち母子に疑いを込めて。
そんな、そんなひどいことするはずがないと母が涙ぐむ。
当然だ。
ペットショップに陳列されたガラスケースの中で激しく飛び跳ね、売れ残りそうな自分を連れて行って欲しいとアピールする姿がいじらしくて堪らず、飼うことにしたロングコートのスコティッシュフォールド。
茶白の長く、ふわふわした毛が特徴的で、母はよく抱き上げたり腹に顔を埋めたりしては大好きよ、かわいいねと常に言葉をかけている。
それだけではなく、いつまでも元気でいられるようにと食事やトイレにも気を遣っている母が、猫の嫌がることを故意にするなんてありえない話だ。
だんだん苛立ちが増して、頭の中に浮かぶ、そして目障りに視界で蠢く影に怒りをぶつける。
「ふざけんな、私に直接突き刺しゃいいじゃねえか、ドクズが」
低い声で、小さく本音を漏らすと母と医師が目を丸くする。
「チラチラ、ひらひら、視界の隅でこっちを見えいて目障りなんだよ。抵抗できない、弱い相手を選ぶとか、次やったらマジで潰すからな」
あんた、どうしたのよと母が診察室の天井の隅を見上げて、ぶつぶつ言う私の肩を掴んだ時だった。
耳元で、確かに聞こえたのだ。
クスクス笑いのあとに、気づかれたせいで悔しそうに鳴る舌打ちの音を。
そして「ブース」と悔し紛れに言う声も。
悪行と脂肪で球体みたいに膨らんだあんたよりマシだよ、と心の中で毒づいた時に医師が「あれ?」と画像を見て首を傾げる。
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