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母も「え、なんで」とポカーンとし、間抜けな声で言う。
胃の中に入っていた異物が、画像から、跡形も消え失せていたからだった。
念のためと医師は再度、猫へレントゲン撮影を行ったが、そこには朝から何も食べていないせいで空っぽになっている胃が写っているだけだった。
後日、会社の先輩から嫌がらせを受けて困っていた友人から、そいつが胃潰瘍で入院したという連絡が入った。胃穿孔も併発しており、芳しくない状態だという。
いちどだけ、友人から社員旅行で撮影したという集合写真を見せてもらったが、でっぷりと太った身体にどんよりと濁った瞳とだらりと下がった口角が暗くよどんでおり、悪い意味で印象的な女性であったものの、私にはこれっぽっちも面識がない相手なことは間違いない。
悪行を邪魔するな、余計なことをするなというおどしでもかけたかったんだろうか。陰湿な上に、逆ギレもはなはだしい。
どちらにしろ、発覚したからには己の身に間違いなく戻ってくる。
「今度やったら、たたじゃおかないから。あんたと一緒に潰しに行くから。言っとくけど、ブスに産んだ覚えもないからね」
ことの次第を話すと、なぜか自分まで血気盛んになった母を宥め、香箱を組む猫の背中を優しく撫でた。
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