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10不滅
亡くなった妻が作った花冠は、玄関のシューズケースの上へ置かれたまま、少しも枯れることなく甘い香りを放って、帰宅した僕を出迎える。
花冠には妻が最も好きな花、沈丁花が使われている。
不滅という花言葉を持つそれは、裏切ることなく常に咲き続けた。
茹だるような猛暑日も、寒波が襲来した雪の日も。
私はずっと、ずっとあなたを愛したまま天に召されるでしょうね。
病に蝕まれ、モルヒネによってぼんやりと混濁した眼差しをし、朦朧とした意識のなかでもなお、妻はそう言い続けていた。
なのに、僕はさっきまで会社の後輩で、仕事でもいろいろと助けてくれた女性と抱き合っていた。好きだから、抱き合ったのだ。互いに溶け合いたいという気持ちが、欲求が、抑えきれなかった。
彼女が持つ若さと弾力を持つ身体がたまらなく心地よくて、きれいで、生命力に満ちていると感じた。快感に対して素直に応じる声や息遣い、眼差しが熱くて、嬉しかった。
互いに果てる時まで、汗がとめどなく流れた。
冷たく柔らかく、しなやかな妻の身体とは正反対だったからか、ますます惹かれたことも嘘じゃない。
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