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自身がいちばん楽しかったころ、自身がいちばん幸せで甘い日々を過ごしていた頃が忘れられず、だんだんと区別がつかなくなったのでしょうと万引きGメンに連絡されて駆けつけてきた警察官が、哀れみを含んだ声で店長に耳打ちした。
「ママったら、きっとマカロンタワーの味見をしているんだわ。チョコレートが大好きだから、ひとつだけ、もうひとつだけって食べちゃって、慌ててケーキ屋さんにお願いしているわ。きっとそうよ。ママったら、本当にお茶目よねえ」
前歯がほとんど欠けている口をにいと歪ませ、老婆は嬉しそうに低く、乾いた笑い声をあげた。
「迎えに来る両親は、とうに鬼籍へ入っているだろうに。マカロンなんちゃらが崩れてもなお、楽しかった子供の頃を捨てきれないんでしょうな」
警察官に向かっても同じように、すでに居ない両親へ連絡してくれと老婆は頼みはじめ、誕生日のことを、マカロンタワーのことをずっと、繰り返し語っていた。
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