弟よ。何故にきらさぎ駅で降りたのだ

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「大丈夫。多分だから」 『全然大丈夫じゃないし、なんですか、その根拠のない……』 そこまで言って、ユウジが急に黙った。 「どうした、弟」 不審に思った千冬が問うと。 『……太鼓。太鼓の音が聞こえるんです』 「ちょ。2ちゃんねるの展開と同じやん!! ヤバいヤバい!!」 慌てる千冬に、ユウジがさらに続ける。 『あと、笛の音が』 「ヤバいヤバいヤバい!! 弟!! 絶対に近づくんじゃないぞ!!」 『ええ。日本にはそぐわない陽気な音ですが、怪しいですからね。近づきません』 「よ、陽気……なの?」 『そうですね。例えるなら、ブラジルのリオデジャネイロのカーニバルのような』 「思ってたんと違う!! 陽気すぎるし、マジなんなん、そこ!!」 叫ぶ千冬に、ユウジが「あ……」と呟いた。 「今度はどうした?」 『近くに民家があるんです。灯りがついてるから、ちょっと見てきます。誰か居るかもしれないし』 「ちょー!! 弟!! それ、フラグ!! ヤバいフラグだから!!」 『家の中、誰も居ないみたいなんですけど。あ、座敷に何かある』 「いや、家の中に入ったの!? 弟、たまに行動力がアクティブになりすぎるよね!?」 『なぜか、座敷のちゃぶ台にピサが。どこかで頼んだんですかね』 「突っ込みどころが満載すぎて、あえて突っ込まないが、それは食べたらアカンやつや。絶対に食べるなよ」 『姉さん。そんな常識知らずはしませんよ。人が注文したものを勝手に食べるなんて……』 「ちゃうわぁぁ!! よもつへぐい!! 黄泉の国のものを食べると、あの世の人になっちゃうから、食べたらアカン言うてんねや!! そこは多分あの世だから食べるな言うてんねや!!」 再度叫ぶ千冬に、またユウジが「あ……」と言った。 「今度はなんなん!!」 『えっと……部屋が二つあって、ドアに張り紙がしてあるんです。一つはあの世行きって書いてあって』 「そっちに入ったらアカンやつやな。もう1つは?」 『ジブラルタル海峡って書いてあります』 「なんでよ!!」 『知りませんけど、うーん……これ、入ったらジブラルタル海峡に行っちゃうんですかねぇ』 「知らんよ!!」 だいたい、何故にジブラルタル海峡なんだろうか。張り紙を書いた人(?)の気分だったんだろうか。 ──書いた人? いや、人かどうかはわからないけど、でも……
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