8人が本棚に入れています
本棚に追加
そこそこ歩いたところで、木々が切り開かれているところがあった。そこには村があった。木と石で作られた家々がぽつぽつと並んでいる。小さな村だ。
「ここが私どもの集落ですぞ。大したものもありませんが、よかったらゆっくりしていってください」
老人がぺこりと私たちに頭を下げる。
「おじいちゃん!」
少女が走ってきて老人に抱きついた。老人はふらりと揺れる。
「おや。クミ、天使様が来たよ」
「……天使?」
少女は私たちを見つめる。セキはびくっとする。無垢な瞳に見つめられる。
「天使様だ! わーい、いらっしゃい! 歓迎するよ!」
褐色肌の少女はにこにこしている。敵意はなさそうだ。これがさっき言っていた天使好きの孫なのかな。
「ありがとうございます」
「いえいえ。広いところではありませんが、ちゃんと泊まるところはありますので」
他の村の人も歓迎ムードで、私たちを排除しようという感じはない。優しい人間たちだ。
「まずは食事を……クミ、一緒に作ろうか」
「私たちも手伝います」
「でも、天使様の手を煩わせるわけには」
「いえ、私たちが手伝いたいんです。ね、セキ」
「……」
「セキ?」
「……あ、あぁ……。わかった、よ」
緊張は相変わらずで、セキの口は震えている。
お昼が終わろうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!