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クミは小さく口を開く。
「わたしは肌が黒いでしょ? だから、他の村の子供からいじめられているの」
私と、一緒だ。いじめ……地上でもそんなことあるんだ。
「それに、体も弱いし。親は二人とも戦争に駆り出されていて、理解者がおじいちゃん以外いなくて。おねえちゃんたちは、私をいじめないの?」
「そんなことしないよ」
セキの言葉に、私はうん、と頷く。
「でも……おにいちゃんたちは天使じゃん。いじめなんて、天界にはないんでしょ」
「あるよ」
私の発言に、クミははっとした顔をする。
「私は真ん中に生まれてきてしまった。天使の輪だけあるから、完全な天使ではなく、完全な人間でもない。お母さんが人間なんだ。ほら見て、羽がないでしょう?」
背中をクミに向ける。
「あ……」
「それで仲間はずれにされて。飛ぶ授業もあるけど、できないし。こっちはこっちで大変なんだよ」
セキは静かに私たちを見つめている。
「そっか……そうなんだね」
クミは真剣な顔をしている。
「まぁ、でもさ。完全な天使でも、真ん中でも、完全な人間でも。今、こうやって会話できているじゃないか。これってすごいことだと思わないかい?」
「おぉー!」
クミはセキに笑いかける。
「人間を怖がってたやつがよく言うよ」
「あはは、まぁ僕は変な本を読んでいたからね。きっとその本が間違っていたんだ」
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