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*  三学期も終わりに近づくと、この学校にも桜が咲き始めた。  桜の重度の花粉症である僕にはつらい季節だった。  薬とマスクが手放すことができず、それがあっても鼻水が止まらなくて、学年末テストの英語や数学には全然集中することができなかった。それでもなんとかテストを乗り越え、春休みはもう目の前に差し掛かっていた。  この日は部活がなかったが、委員会の仕事があったので僕は中途半端な時間に学校を出た。もう夕方でも日は高く、辺りは明るかった。  昭和の頃から変わっていないとかいう噂の駅舎に入ると中には誰もいなかった。年季の入った石油ストーブの上の空気がゆらゆらとしていた。  僕はベンチに座り、大きく息をつく。  今日も花粉が多いのか鼻水が止まらない。薬の効果は切れてしまっているんだろうか。中途半端に温かい駅舎と鼻水が原因でぼーっとした頭のせいで、僕は何だか眠くて仕方がなかった。  そんなとき、誰かが駅舎に入ってきた。誰だろうとドアのほうをみると、それは人懐っこい笑顔の持ち主・渡瀬唯香だった。 「浅葉もいま帰り?」 「うん。委員会があった」 「私も。文集委員は三学期だけ忙しい」  渡瀬は僕と人ひとり分の隙間を空けて座った。冷たい空気がふわりと舞った。  電車が来るまでは30分ぐらい時間があった。都会ならすぐに電車が来るのだろうけれど、田舎のマイナー路線じゃそんなすぐにはやってこない。
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