10.ほどけてまじわる

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 毎晩熟睡しているにも関わらず、頭が重い気がする。調子に乗って日に当たりすぎただろうか。 「……日陰いくか」  暑さと考え過ぎるあまり頭がオーバーヒートしているのか、何をどこから撮ればそれらしく見えるかなんて考える余裕がないし、そもそも雪彦がいる限り撮影に集中できそうもない。  どこか邪魔にならない休憩場所を探すか、冷房の効いた定食屋で休ませてもらおうか。  一歩踏み出そうとしたのだが——何だか、上手く力が入らない。 「……あ、れ」  視界全体がちかちかと、たくさんのフラッシュを浴びた時のように明滅を始める。  ——なんか、変だ。 「……! 秀さん⁉ 危ない!」 「うあ……」  雪彦がどこかで何かを叫んだのを聞きながら、身体がぐらりと傾いだ。どうにか踏ん張ろうとした途端に視界が暗転し——けたたましい轟音を聞きながら、ぷつりと意識が途絶えた。 ■■■ 「……熱も下がったようですね」  秀から体温計を取り上げた雪彦が、嘆息混じりに言う。秀はその声を憮然と聞いていた。  須子島の診療所には常駐の医師がいない。本土から通う壮年の内科医は、先ほど、秀が意識を取り戻したのを確認するとフェリーの最終便に合わせて引き上げていった。  最低限の薬品や医療機器があるために医者の帰宅と同時に診療所は施錠されてしまったが、医師が「涼しいところで休んでいた方が良いだろうから」と診療所に隣接した集会所を開放してくれた。まだ身体がだるくて家に帰れそうもなかったので渡りに船だった。
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