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気分が高揚して雰囲気に呑まれたのか、それとも、本能的に苦痛の中から快楽を拾い上げようとしているのか——浅いところの一点を捏ね上げられるたび、腰に強烈な快感が走るようになった。次第に腰が浅ましく揺れ、だらしのない喘ぎと共にいやらしい水音が鼓膜を犯し始める。
「あっ、いい、やば、いっ!」
もう触れられていないのに、張りつめた先端からとぽたぽたととめどなく蜜が滴る。今でさえこんなに気持ちいいのに、さらに太いもので劈かれたら——想像しただけで達しそうになり、太ももががくがくと震えた。
「も、だめだ、ゆき、こい……」
「っ……!」
指を引く抜くと同時に横抱きに背後から抱きすくめられ、拡げたばかりの後孔に熱くたぎった怒張が宛がわれた。ぐっ、と奥まで貫かれた瞬間、視界が白く弾ける。
「あっ、あぁ!」
「秀さんの中、柔らかくて、あつ、い……!」
耳元に興奮しきった雪彦の吐息がかかった。腹の中も、頭の中も、彼でいっぱいになる。自分の腕を噛んで悲鳴交じりの嬌声を堪えながら、圧倒的な快感に溺れた。貪るような、秀のすべてを食らい尽くそうとするかのような腰使いに、彼を求めて枯れていた心が満たされていくのを感じる。
様々な欲を吐き出し、受け止め続けるような、父と兄がしていたのとは違う。
心まで繋がるような行為。
過去の凄惨な記憶が、行為が、ままならない感情が、ぜんぶ雪彦によって塗り替えられていく。
「声、我慢しないで聞かせてください」
「っ、誰か、来ちゃ、う、から!」
「大丈夫、見えませんし、見せません。ここには俺と、あなただけ」
——それなら、いいや。
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