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「梨音がおかしいんだ。志摩さんのここに来た経緯を知っているのに、側室に成れと無理強いするんだ。そんなこと良くないと思うし、碧から梨音にやめるように言ってくれないか」
その訴えを聞いた瞬間、碧は怒りで頭の中が真っ白になった。すぐに言葉にならないので、顎をクイッと上げて呆れたような視線で太郎を睨んだ。その視線の意味を気づきもせず、太郎は碧の救いを求めてじっと見つめながら待つ。
入り交じった膨大な感情を、頭の中で言葉にするのに、碧は百ほど数える時間を必要とした。それは静かで不穏な空気が、この空間を支配した時間でもあった。
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