第14話 決闘

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第14話 決闘

 梨音が志摩に求愛し、太郎はそれを抗議するために、激務に埋没する碧の部屋にやってきた。情けない姿で助けを求める太郎に対し、好意と憎悪で感情の制御ができなくなった碧が、ようやく口を開いた。 「ぬるま湯に浸っている内に色ぼけしたんじゃない。兄に好きな女が取られそうだから、なんとかしてくれって、馬鹿じゃない。この机の上に積み重なった、膨大な仕事が目に入らないの。私は太郎のくだらない話につきあってる暇はないの」  猛烈な口調で罵倒され、この状況を予想していなかった太郎は、呆然と立ち竦んで碧を見るだけだった。そんな太郎に、碧は容赦なく口撃を続けた。 「ここは大坂と言えども、自連の精神が宿る地よ。ここでは誰でも、相手がどんな立場にある者でも、好きに成ったら思いを告げることができるし、力尽くでなければ結ばれることだってできる。自由を保障されることによって、ここに集う人たちは活力を養い、明日に向かって歩くことができる。もちろん自由に振る舞うことによって、時には人を傷つけることもあるわ。でもそれは差別や不平等の中で与えられた傷よりも、遙かに癒やし易いと私は信じてるの」  碧は全てを言い終わって、太郎の反応を待った。今話したことは、共に幼い頃から教わってきた自連の精神そのものだった。太郎の目に再び輝きが戻ることを、碧は期待した。  しかし太郎は俯いたまま、碧の顔を見ないままボソボソと話し出した。
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