第14話 決闘

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 太郎は志摩と一緒に宿舎を出た。長屋を抜けたところで、一緒に歩いている梨音と碧に遭遇した。これ幸いと太郎が話しかける。 「二人に話がある。聞いてくれないか」  二人は立ち止まった。梨音は不快そうな顔で二人を見る。碧も冷たい表情で、太郎を睨み付けた。志摩は後ずさりしたが、太郎は握った手に力を込めて、逃げるなと伝えて、勇気を振り絞って話し始めた。 「俺は志摩さんと一緒に成る。そして二人でここで暮らす。それを認めて欲しい」 「私は反対。一緒に暮らし始めれば、あなたは志摩さんは彩恵さんじゃない、ということにいずれ気づくわ。あなたは前以上に無気力に成って、ここに悪い影響を与える」  碧が淡々とした口調で反対した。 「そんなことはない」  太郎がムキになって否定する。 「俺にもお前のそうなる姿が目に浮かぶ。悪いことは言わない。その女は俺に譲れ」  太郎は梨音が志摩を物のように言ったことに腹が立った。しかしそれはきっかけに過ぎない。本当はその前の碧の言葉が胸に刺さっていた。しかし怒ることで微かに生じた迷いを振り切って、太郎は叫んだ。
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