第15話 誓い

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第15話 誓い

 太郎は慎重に梨音との間合いを詰めた。梨音の最大の武気は、斬撃と同時に放たれるカマイタチだ。自分が作り出す氷の盾が、それを防げるかどうかは分からない。ただ、影腹を切って武気を増した吉川広家には、あっさりとかち割られてしまった。あのときの広家より、梨音の武気は遙かに上を行くような気がする。とすれば、太郎としてはカマイタチが放たれたら、もしくはその斬撃の兆候が見えたら、すばやく避けて氷の一撃を加えるしかない。体術の修練は十分に積んだ。 「来ないのか。ならばこちらからいくぞ」  太郎は身をかわす準備をして、梨音の手元に集中した。避けるのが早すぎると、避けた先を狙われるからだ。  首筋を生暖かいものが伝わる感触がした。慌てて首に手を当てると、生暖かいものは自分の血だと分かった。いつの間にか首を浅く斬られていた。それは太郎の肉眼では捕らえきれない高速の居合いだった。いつ鞘から刀が出て、戻ったのかまったく見えなかった。 「未熟者め」  梨音が吐き捨てるように、太郎を蔑んだ。頭にカーッと血が上った途端、右の二の腕に痛みが走った。今度も浅いが先ほどより少し長く斬られた。太郎にはまったく剣筋が見極められない。これほどの実力差があるとは夢にも思わなかった。  次は左腕、右足、左足、いいように斬られ続ける。
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