第15話 誓い

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 しかも梨音は国を、そして勝悟の理想を守るためだけに、苦行を重ねて強くなったのだ。  太郎は完全な敗北を察して、戦意を無くした。 「もうあきらめたのか。この親不孝者が。力で及ばねばなぜ考えぬ。知恵は力に勝るこそ、私たちの父勝悟の口癖であったはずだ」  太郎が項垂れ、自分の未熟さを認めようとした瞬間、志摩が恐るべき速さで碧の背後に回り、その首筋に匕首(あいくち)を突きつけた。 「まったく、本当にダメな男だ。真野勝悟の息子だと思って、期待した私が馬鹿を見た。真野梨音相手に正面から武力で対するなんて、甘ちゃんもいいところだ」  志摩はそれまでの上品な佇まいをかなぐり捨てて、太郎を口汚く罵った。 「ようやく正体を現わしたか。この雌狐め」 「おっと居合いはなしだよ。私を斬った瞬間、私の武気は火を放って、この女もろとも火だるまさ」  勝ち誇ったように語る志摩に、梨音は苦笑いする。 「いい調子だな。どうだ太郎、変化の術が解けて真実が見えたか」  太郎は唖然としていた。さっきまで彩恵の生き返りのように見えていた志摩が、ただ美しいだけの下品で凶悪な女に変わった。 「私はどうしたのだ。なぜ、こんな」  あまりの志摩の変わりように、太郎は混乱していた。
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