第17話 反政府の輩

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 三木は舌鋒鋭く政府批判を叫んでいる。集まった民もその叫びに呼応して、「オー」と雄叫びを上げた。参加者は戦を知らない若者が多い。  自連は建国十八年を迎え、自連で生まれ育った若者がいよいよ世に出てきた。頭が良くて弁が立つ彼らは、誇り高く地道な労働を嫌う傾向がある。  一方自連の産業振興を影で支えたのは、平和で好機に溢れたこの地に憧れ、他国から流れ着いて来た若者たちだった。彼らは財産を持たず、有力な人脈も持たなかったが、どんな仕事にも不平を漏らすことなく懸命に働いた。勝悟の仕掛けた二一世紀の文明につながる産業革命は、そんな移民者に大きな飛躍の機会を与え、成功者を輩出した。  そんな移民者の成功を横目で見ながら、自連生まれの若者たちの不満は高まった。彼らには移民者が、平和な国に現われた侵略者のように思えた。できることなら余所者を排除し、今の繁栄を独り占めしたいと思っていた。だから国費を使って、他の地域を助けることは、彼らが享受するはずの権利の放棄のように思えた。  この集会に参加した若者は、ほとんどそんな不満を持つ自連生まれの者たちだった。 「まったく忌々しい。ここに集まった者たちを全員徴兵して、軍で鍛え直してやりたいところだ」
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