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あたしは急いで紫色の鳥をたまごの中に入れ直す。止まっていた動きは再開される。大きなたまごが電池になっているよう。これは、あたしの頃に流行ったたまごに似ているけれど、違うたまごだわ。
「おばあちゃんから本当に送るって言ったの?」
「え・・・ちょっと待って」
【菊乃ばあちゃん】と表示されたラインを開き、テレビ電話へと切り替えた菜乃花は、スピーカー音にした。
プルルル・・・
プルルル・・・
ツーコール目で出た母に、あたしは問いかけた。
「お母さん、大きなたまご送ったの?」
『菜乃花じゃないのね。いきなり何よ?ないのに送るわけないじゃない』
「待ってよ。菊乃ばあちゃんの名前で届いたんだよ。誰が・・・」
結香は自宅を知っているから、住所で宛名をすらすらと書けるだろう。けれど、娘が生まれたとSNSで報告したけれど、名前までは明かしていない。
「お母さん、菜乃花のこと話した?」
『誰に?』
「本上結香に!!」
画面上の母の顔が驚きで歪んだ。結香は3日前に事故死したと話してくれた。配送日時は3日前になっている。
『想いが強くなって宿ったのかもしれないね。結香ちゃんの魂がたまごに』
菜乃花もあたしもテーブルから離れていく。たまごの中にいる紫色の鳥はカタカタと動き、バリバリと殻を踏んでこちらを見ていた。そして、バサバサと瞼を開閉させて、勝手に話し出す。
『たまごは大切に育てましょう?菖蒲ちゃん』
****
本上結香は毎日のようにあたしの実家に遊びに来ていて、菜乃花のことを母から聞いたらしい。そして、彼女は昔から機械をいじるのが好きだったから、たまごを改造することは簡単だったはずだ。
「菜乃花?」
怖がっていた菜乃花が吸い寄せられるように、テーブルへと近づいていく。鳥を大きなたまごへと戻して、あたしに差し出しながら微笑んでいた。
「ママ、たまごは大切に育てましょう?」
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