小さなたまご

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小さなたまご

 手のひらに収まるほどの小さなたまご。有名な育成ゲームを娘が欲しがったとき、あたしは娘にこう言った。 「たまごは大切に育てましょう」  娘に言っておきながら、ざわざわした。なんだろう?こんな嫌な感覚は・・・ ****  菜乃花のたまごがテーブルに置かれている。小学校卒業祝に買ったとき、遅いと膨れた。ランドセルのワンポイントとして欲しかっただけだと言いきったとき、あたしはあの言葉を言い聞かせた。 「菜乃花、これ」  春休みに入った瞬間に、髪の毛を染め始めた。2週間だけ染められるシャンプーらしい。娘は小さなたまごよりも夢中になるものを見つけた様子。 「電池抜いてあるから、もうオワコンだから!!」  終わったコンテンツそう言われてしまったよ。あたしの頃とはデザインせいも多用になっていたのに・・・ 「可哀想に・・・」  そう呟いたとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。菜乃花が注文した雑貨なのだろうか?大人びていくことはいいことだけれど、あれもこれもと新しい物好きになり、続きはしない性格になってしまった。 「ママ、大切に育てなかったんだって?」  段ボールに抱えてきた菜乃花は、テーブルの上に置いていく。送り状に書かれていたのは、実家の住所で、菜乃花を甘やかしている祖母だった。
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