大きなたまごへ

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 バサバサと開閉する瞳を何度も見つめている菜乃花は、対面する椅子に深く座り込んで長いまつげだと羨んでいる。 「映える~撮っていい?」 「ダメよ!!」  あたしはいつもより大きな声を出した。それはあたしのたまごでも鳥でもない。 『菖蒲ちゃん、帰ってあげてよ?お母さんのところへ』  鳥肌が立った。この声は録音されている。菜乃花が右の羽にあるボタンを押したから再生されたのだ。 「ママ、どういうこと?」  菜乃花があたしを見つめてくる。頼んでもいないのに、鳥まで動かして、紫色の鳥は、たまごの中で、足を動かして、たまごの殻を踏みつけるバリバリの音が響いていく。 ****  小学校3年性の頃、あたしたち世代に流行った大きなたまごがある。 『あやめちゃん、録音できるんだよ?右の羽で再生して、左の羽で録音するの。スゴいよね!!』  流行りのたまごをあたしの家に持ってきた友人は、あたしがそのたまごを欲しがっているのを知っていた。自分は2羽いるのだと言い1羽をあたしにくれた。 『ゆいかちゃん、ありがとね。この子に育てられるかしら』  あたしの部屋に入ってきた母は失礼なことを言っている。あたしが育て飽きないように、結香は提案してくれた。 『たまごの交換しようよ?交換日記みたいにさ、いいでしょ?あやめちゃん』  音声で交換日記をする。新鮮さにあたしはすぐに頷いた。それからしばらく、たまごの交換を続けていたけれど、あたしは育てたくなくなっていた。
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