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「今日もフラワーアレンジメントの教室でほめられちゃった」
家に帰って、夕食の時間。
パパは仕事で帰ってきていないので、ママと二人でごはんを食べる。
ママは上機嫌だった。
今日に限ったことじゃなくて、ここに引っ越してきてからママは元気だ。
ミリカは本当にママに似ていないと思う。
切れ長の一重瞼に薄い唇。典型的な日本人顔。
都会の人混みよりも、この活気のない街の方が落ち着くというのだから信じられない。
以前から習っていたフラワーアレンジメントも、こっちの教室の方が人数が少ないから、先生に丁寧に教えてもらえると喜んでいる。
「ミリカも最近落ち着いてきたし。ここにきてよかったわね」
「そうだね」
ミリカはうなずく。
学校でぼっちになってることは言ってない。
ママは本当に怒らなくなった。
以前はミリカがショートパンツをはいたり、お腹を出したりするファッションにいつも口出ししていたし、セリナたちのことも悪い友達にみえたらしく、あんまり好きじゃなかった。
以前のママの心配はまったくの杞憂である。
ミリカたちはやさぐれているタイプではなかった。
学校で怒られないギリギリのラインを攻め、むしろ先生から可愛がられるタイプだった。
みんな協調性のあり、文化祭なんかは盛り上がる。
あのまま東京にいても悪い遊びなんかしなかっただろう。
そこが学生時代、優等生だったママには分からないらしい――。
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