サクラ色のミリカ

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ごはんを食べ終え、ミリカは自室に戻る。 いつもならベッドで寝転がり、スマホをいじる。 裏アカで東京にいるセリナたちの動向をチェックするのが習慣になっていた。 ミリカがいなくても楽しくやっている様子を見るのはむなしくもあったが、 セリナたちの陽気さが今のミリカには必要だった。 セリナたちのことは一方的に見るだけで、最近やりとりはしていない。 「どっちはどう?」って聞かれても「最悪」としか答えられず、「また会いたい」で終わってしまう。 会えば、前と同じテンションで盛り上がれるだろうけれど、場所が離れてはなかなか難しい。   だけど今日はスマホではなく、引っ越しの段ボール箱を取り出した。 中に入っているのはメイクグッズだ。 ここにきてからメイクはしなくなった。 見せる相手がいないのではやってもむなしいと思っていたからだ。 もちろん美容好きは変わらず、 メイクをしなくなった分、 日々のスキンケアに力を入れている。 そのため、東京で集めに集めたメイクグッズは段ボール箱にしまったまま、 まだ開封すらしていなかった。 ミリカはとことん甘いパパのおかげで、 プロのメイクさん並にいろいろなものを持っている。 ひとつひとつ取り出して、ドレッサーの棚にしまっていく。 引っ越しする前に段ボールに詰めていったときは、 いろいろと思い返しながら、片付けていて時間がかかったけれど、 今回は業者並みのスピードで手早く並べていく。 空になった段ボールをたたみ終わった後、 ドレッサーに座ったミリカは桜色のネイルを取り出した。 昔買ってから、一回しか使ったことがなかった。 どうにも色が淡すぎて塗ったかいがなかったのだ。 ミリカは基本濃い色が好きだった。 一番似合うとも思っている。 ひさしぶりに桜色を塗ってみたが、やっぱりもの足りなかった。 けれどミリカはそのままネイルが乾くのを待った。
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