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「川島さんのネイルかわいいね」
ミリカはめずらしく向こうから話しかけられた。
美術の時間。それぞれの似顔絵を書く課題をしている。
出席番号順でペアになったのは、吹奏楽部の葉月だった。
「たまにはと思って塗ってみたの」
マスクを外した顔には桜色のリップクリームもつけてきた。
「そうだよね。ちょっとぐらいしたいよねー」
そういう葉月の指先も口元も桜色である。
「東京の学校ってさ、どんな感じなの?」
昨日の咲とは違い、
葉月はおしゃべりなたちなようでミリカに質問をしてくる。
仲良しグループじゃなくても、気兼ねなく話せるタイプなのだろう。
ここの学校の人たちはみんな一緒に見えていたけれど、
それぞれ性格は違うのだ。
けれど、やっぱりセリナたちとは根本的に違う。
ここの人たちはのんびりしていて、
みんな花びらがゆらりゆらりと舞うようなテンポで話す。
葉月の質問に答えながら、美術の時間はゆっくりと過ぎていった。
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