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サクラ色のミリカ
「ミリカの今日のリップいつもと違くない?」
お弁当を食べるセリナにたずねられる。
中学校の昼休み。
ミリカたち四人は窓際に机を固めて、
お弁当を食べる。
「わかった? リプココの07番やっとゲットしたんだよねー」
ミリカは満面の笑みで答える。
マスクにつかないリップとして絶大な人気を誇るリプココは、いつも品切れでなかなか手に入らないシロモノだ。
もう一年以上前からバスっているけれど、
ちっとも在庫がないことで有名だった。
学校の帰り道にいつも立ち寄るコスメ専門店で、ようやくこのピンクレッドのカラーをゲットできたのだった。
「えぇ、ヤバ。いいなー、あたしも欲しー」
丁寧にブローされた長い髪を触りながら、
サエがうらやましそうに見つめる。
学校ではメイクは校則違反だ。
けれど、授業中はマスクをしているのでメイクをしたところで先生にはバレない。
あの頃のわたしたちは、マスクの下でメイクするのが当たり前だった。
ミリカは古びたドラッグストアで、
リプココの全色がずらりとそろった棚を見て、
セリナたちのことを思い出す。
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