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「そもそもです。どうして私が王子殿下の帰国パーティーに参加しなければならないのですか?」
本日のパーティーは、王城で開かれる。それも、第三王子の帰国を祝うパーティーだ。
第三王子レックス・ウィバリーは三年前から他国に留学しており、昨日帰国した。
そして、彼も十九歳を迎えたということから……ついに婚約者を決めるということに。
つまり今回のパーティーは、レックスの婚約者を決めるためのパーティーという意味合いも含まれている。
「まぁまぁ、リネット。そんなにぷんすかしないのですよ。……美味しいものを食べて、音楽を聴いてくるだけではありませんか」
「それが出来たら、苦労しないわ」
プイっと顔を背けて、リネットはそうぼやく。
実際、リネットは割と真面目な性格である。与えられた課題はしっかりとこなすし、目的が目的ならばしっかりと遂行する意思もある。ただ、たかが子爵令嬢である自分が王子の婚約者選びのパーティーに参加する意味はないと、思っているだけだ。
「大体、選ばれるのは伯爵家以上の家柄の令嬢と相場が決まっているではないの。……子爵令嬢なんてお呼びじゃないわ」
今まで、ずっと伯爵家以上の家柄の娘が婚約者に選ばれてきたわけではない。が、ここ百年は王家も安定を取ってか大体公爵家や侯爵家から王子王女の婚約者を選んでいる。
本当に伯爵令嬢ならばまだしも子爵令嬢などお呼びではないだろう。
「ですが、リネット。万が一ということも……」
「あり得ないわ!」
思わず、大きな声が出た。
その所為で気まずそうに視線を逸らし、リネットは反省する。……母が悪いわけでは、ないのだ。
(そうよ。たとえ私が男性に相手にされないとしても、それはお母様の所為でもお父様の所為でも、お姉様の所為でもない)
――ただ、自分に魅力がないだけなのだ。
心の中でそう思い、自分を納得させる。もちろん、納得できない部分も多い。
だけど、さすがに好きな人に堂々と陰口をたたかれていたことを知ったときは、心がぐさぐさと刃物で刺されたような痛みを覚えたが。
(いっそ、平民の人でも捕まえようかしら? 商家の方ならば、まだお父様も認めてくださるでしょうし……)
リネットとミラベルを溺愛する父は、リネットが平民に嫁ぐことを良しとはしないだろう。
しかし、商家ならば違うはずだ。金銭的にも安定しているし、下位貴族が嫁ぐ相手として申し分ない。
(どうせ、私は誰からも見初められないのだから――)
そう、リネットは思っていた。
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