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3. 究極の選択?
僕は気象予報士だ。
この季節、肩身が狭い。そう、僕は桜の開花予報だけ当たらない気象予報士なのだ。
所属する気象会社の予想に自分なりの味付けをするのだが、それがうまくいかない。このエリアの標準木を見るし、エリア内にある桜の名所のチェックも欠かさずやっているのに、当てられない。
でも、それが恒例になっていて、同僚によるとかの有名な電子掲示板には、『名前負け?当たらない気象予報士 佐倉 当(サクラ アタル)の開花予報【○本目】』なんてスレがもう11本目まで続いているらしい。もちろん、怖くて覗けない。
今日も局のディレクターから、「今年も期待しているよ」とニヤニヤ笑って肩を叩かれた。
ADの子の話によると、僕が何日はずすか、SNSで予想が出ているらしい。「だから、冗談でも当てちゃだめですよ」と言われた。
しかし、僕は冗談でなんて予報していない。真剣なのだ。どんな予報であれ、当たらないってことは信頼性に欠けてしまう。
所属する気象予報会社の上司の島村課長からは、「お前、いい加減今年は当てろ。浜田の予報をそっくりもらうか、佐久楽神社にお参りに行け」と言われた。
浜田凪沙さんは二年先輩の気象予報士で、美人で優しく仕事もできる僕の憧れの人だ。
他局の朝の情報番組でお天気キャスターをやっていて、ファンクラブができる人気だ。
その凪沙さんから予報をもらうなんて、僕は絶対嫌だ。いつか一人前の気象予報士になったら告白しようと思っているのに、助けを求めるなんてできない。
それなら……。佐久楽神社に行くしかないのか? あの佐久楽神社に?
実は佐久楽神社には苦い想い出があった。
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