5. 再会

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5. 再会

 しかし、背に腹は変えられない。  僕は十数年ぶりに佐久楽神社を訪れた。金曜日の夕方、神社に人の気配はなく、鳥居をくぐると懐かしさで胸がいっぱいになった。社務所の方を見るが、サクの姿どころか、扉は締まり人気(ひとけ)はなかった。  拝殿の前でお賽銭を入れ、二礼二拍手して『桜の開花予報、今年こそは当たりますように』と祈って、一礼した。ほっとしたのも束の間、後ろから声がかかった。 「おい!」  びっくりして振り返ると、僕と同年齢で、白い着物に水色の袴の、神職とわかる男性が立っていた。その言葉遣いに、すぐに誰だかわかった。 「サク?」 「アタル、お前、遅すぎだぞ! さっさと()りゃあ良かったんだよ」    神主になっても、口の悪さは相変わらずだ。 「いいか! 詣りに来なきゃ、こっちは手出しできねえんだよ!」  言ってる意味はわからなかったが、僕は思わずサクに抱きついた。 「サクーー!」 「げっ。やめろ。暑苦しい。それよか、飲みに行くぞ!」  引っ張られるように境内を出ると、すぐ近くの居酒屋に連れて行かれた。  十数年ぶりの再会に、僕達はしこたま飲んだ。サクは酒が強かった。僕がそれを言うと、サクは「そりゃ、御神酒で毎晩酒盛りしてるんだ。強いに決まってる」と豪快に笑った。  何か大切な話をした気もしたけど、僕は最後潰れてしまって、どうやらサクに送ってもらったらしい。記憶がなくなっていた。次の日が仕事じゃなくて、本当に良かった。  翌日の土曜日、昼近くになんとか起きると、母が台所にいた。 「ね、昨日、僕、誰かに送ってもらってた?」 「一人だったよ。でも、とても楽しそうに帰ってきたねえ」と言われた。  そりゃあ、大切な友に再会して、わだかまりが溶けたんだ。というか、サクは全然、僕のことを怒ってなんていなかったのもわかった。勇気を出して、神社に行って良かった。  あとは開花予報を当てるだけだ! あれ? 何かサクに大切なことを言われた気がする。なんだったっけ?    
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