9. やっぱり桜は嫌いだ!

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9. やっぱり桜は嫌いだ!

 アタルの開花予報は五年目で見事的中した。  アタルは彼女になった凪沙と一緒に俺の所にお礼参りにきて、それから東京に転勤していった。  俺を探して、社務所で「サクはいますか? 若い、僕位の年齢の神職の人です」と尋ねていたが、「いや、そんな人いないな。一番若いのは私だよ」と、この神社で一番若い、四十代の禰宜(ねぎ)に言われ、きょとんとしていた。  その上、アタルと凪沙だと身バレしてしまい、宮司や禰宜と記念写真を撮るはめになった。  今度、アタルが帰省してきたら、また人の姿になって久しぶりに一緒に蹴鞠でもしてやるか。  商売上手な宮司は、アタル達と撮った写真やアタルが奉納した絵馬を使い、今度は『出世運向上の御利益あり』と宣伝し始めた。アタルが開花予報を的中させた上、全国放送のお天気キャスターに出世できたからだそうだ。  気象予報士の参拝が落ちついたと思ったら、新年度に向けて出世運を願うビジネスパーソンで境内は大賑わい。桜印の出世開運守まで売り出し始めた。  お陰で俺はなかなか暇にならない。やっぱり俺は桜が嫌いだ! <了>      
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