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晴夜が言っていた、私は晴夜ほどこの世界に拒絶されていない、ということだろうか。だから、晴夜のかけらを食べなければ、私はこの世界でそのまま暮らしていけたのかもしれない。
あの桜の世界の効果が私の中に残っていた。
つまり、私はこの新しい世界で年を重ね、けれどもこの世界で年を取ることはなくなっていた。いつまでも子どもの姿の私は気味悪がられ、そして次々と居場所を失って逃げ出し、新しい名前を得た。それがどのくらい続いたのだろうか、晴夜とあの桜の海であったこと以外、私の記憶はすでにおぼろげになっていた。
そのうち私は、何も食べなくても生きていられることに気がついた。結局のところ、晴夜は人ではなかったのだ。だから晴夜は私のように世界から拒絶され、そして私には晴夜のように居所を与えてくれるような友人などいなかった。
けれども私には、ここ以外に居所がない。
穂赤湧水の近くに潜んでただ、誰にも見つからないようにずっと静かに座っているしかなかった。何故こんなことになってしまったんだろう。だんだんと居場所がなくなり、ぎゅうぎゅうに押し込められて押しつぶされて死んでしまいそうだ。
他のものを食べることをやめてから、私はますます化物じみた。あの晴夜の与えた指先のように体から四肢が失われ、ただの目鼻のある肉の塊と化した。
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