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#1「希望なんかねぇよ」
「あー死にたい…」
そう思ったのはもう219675回目であった。
嘘だ。そのぐらい多いという例えでしか無かった。
「右にありますのはテーブルon theビールでございま〜す!左にありますのは食いかけのコンソメポテチでございま〜す!」
デカデカと独り言をつぶやくこのデブ女は信じ難いことに主人公である。
バック内のファイルに挟まった履歴書には丸っこい字でこう書いてあった。
・後藤引子(ごとうのぶこ)
・25歳
・趣味…ゲーム、映画鑑賞
(分かりやすいように端折られております。)
のっそり起き上がった引子ことデブ女は、ふと全身鏡に目を向けた。
ひじきを貼っつけたような頭に太眉。
起きてるのか分からない目に豚鼻。
明太子唇にふくよかな顎という言葉に表すには醜い顔だった。
オマケにガラガラ声であった為、誰も話しかけようとも思わないのであった。
眉間に皺を寄せ、視線を右の写真立てにずらす。
そこにはスーツ姿の細身の引子と母親の写真、その隣には高校卒業時の写真がある。
どれも今の引子にとっては直視できないものとなっていた。
トイレに行こうとした瞬間だ。
「いっっ!?」
小指を強打した。
外はそんな引子を嘲笑うかの様な真っさらな青空が広がっていた。
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