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#10「CHAOSZONE」
「ただいまぁ〜」
誰もいない家に帰ってきた引子は、少し嬉しそうな顔で冷蔵庫を開けた。
(あれ?)
先日見た味噌と豆腐が明らかに減っている。
なんなら自分が飲もうとしていたビールも1本ない。
(酔った時に減らしたのか…?いや、でも変だなぁ…)
急なめまいが襲い、引子はうずくまる。
一瞬視界に入った鏡には知らない人がこっちを見ている。
「誰…?」
電源が切れたように引子は意識を失った。
引子は周りを見渡した後おもむろに立ち上がり、鏡の自分に向かって話しかけた。
「…わりぃな。」
明るい室内で引子は目を覚ました。
テーブルには進司から借りた本、ハンカチが置かれており、バックはいつもの様に部屋の隅っこに置かれていた。
「あれ…?私さっきまで何してたんだっけ?」
一つ一つ思い出しながらも、喉が渇いてきたため冷蔵庫を開ける。
「え…。」
ビールがあるが、1本増えている。
自分の好物の生ハムもあり、冷蔵庫内は綺麗に整頓されていた。
(私こんなの買ってない…。)
慌てて下の段も見る。
自分が買わないような様々な肉が冷凍されている。
その下にはまた買った覚えのない野菜、果物があった。
(どうして!?なに?なんなのこれ!?)
窓の外から朧月夜が怪しく光っていた。
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