#10「CHAOSZONE」

1/1
前へ
/54ページ
次へ

#10「CHAOSZONE」

「ただいまぁ〜」 誰もいない家に帰ってきた引子は、少し嬉しそうな顔で冷蔵庫を開けた。 (あれ?) 先日見た味噌と豆腐が明らかに減っている。 なんなら自分が飲もうとしていたビールも1本ない。 (酔った時に減らしたのか…?いや、でも変だなぁ…) 急なめまいが襲い、引子はうずくまる。 一瞬視界に入った鏡には知らない人がこっちを見ている。 「誰…?」 電源が切れたように引子は意識を失った。 引子は周りを見渡した後おもむろに立ち上がり、鏡の自分に向かって話しかけた。 「…わりぃな。」 明るい室内で引子は目を覚ました。 テーブルには進司から借りた本、ハンカチが置かれており、バックはいつもの様に部屋の隅っこに置かれていた。 「あれ…?私さっきまで何してたんだっけ?」 一つ一つ思い出しながらも、喉が渇いてきたため冷蔵庫を開ける。 「え…。」 ビールがあるが、1本増えている。 自分の好物の生ハムもあり、冷蔵庫内は綺麗に整頓されていた。 (私こんなの買ってない…。) 慌てて下の段も見る。 自分が買わないような様々な肉が冷凍されている。 その下にはまた買った覚えのない野菜、果物があった。 (どうして!?なに?なんなのこれ!?) 窓の外から朧月夜が怪しく光っていた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加