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#14「のこのこ帰還」
「じゃあ…ルベウスさんは現実世界に出てこれないってことですか?」
「いや、出てこれるがこの姿じゃねぇ。お前の体を借りるしかねぇんだよ。あのデブったらしい体でな。」
蛇のような鋭い視線に体をビクつかせると、ルベウスは光の差す場所に歩いていった。
「戻りてぇんだろ。見せてやっから来いよ。」
引子は慌ててルベウスの後を追う。
「見てろよ。」
ルベウスが光の真ん中に立った瞬間、目の前に大きなプロジェクターの様なものが現れた。
「あっ!」
自分の手元が見える。
「これが今俺が見てる世界だ。ここに立つと現実に出てこれる。」
(まるで自分目線の映画を見てるみたい…)
そう思っているとプロジェクターが暗くなる。
脳内で突っ立ったままだったルベウスが急に動き出した。
「ほらここに立てよ。戻りたいんだろ。」
「えっ…あのちょっと…。」
引きずられながらも引子が質問しようとすると、ルベウスはため息をついた。
「これからもお前が寝てる時仕事するし、買いてぇもん買うし、食いてぇもん食うからな。一々不安がるなよ。」
その声を聞きながら光の真ん中に立った瞬間意識が薄れていき、複雑な表情をしたルベウスが霞んでいった… 。
視界が開け、いつもの自室だということが分かる。
外の朝日がとても心地よかった。
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