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#16「ぞーぞーえいぞー」
「なんの動画…?こんなの撮った覚えないけど…。」
恐る恐る再生を押すと、動画内の自分が動き出した。
「よぉ、ルベウスだ。…これ、映ってんのか?」
慣れない手つきで位置を固定させようとする自分がいる。
だがその声は元々の声より更に低く、目つきは自分のものとは思えないほど鋭くなっていた。
「急に入れ替わった時に、お前がなんかノートにごちゃごちゃ描いてるのが見えてな。別にノートにそのまま描けば良かったんだろうけどめんどくせぇから動画で1個1個言うからな。」
(なんか、自分で自分の動画見るの変な感じだな…。)
そう思っていると、ルベウスがノートを手に取った。
「えーと?俺はいつからいるか?知らねぇよこっちが聞きてぇよ!1番最初の記憶は中学とか…その辺だな。だけど記憶ないだけでもっと前からいるかもな。」
中学は引子の中で1番記憶に薄く、嫌な記憶だけは何故か虫食い穴の様に覚えていない。
「で、次の質問は…。」
(質問コーナーの動画見てるみたい…。)
「あ、やべ、1個飛ばしてたな。脳内に戻る方法だけどな…。」
答えようとした時、何やらふらつく様子が映る。
「うわ、まじかよ…。」
そのまま動画が止まり、引子は怪訝な顔で携帯を見つめる。
窓の外の日差しはもう届くことなく雨雲で覆われていた。
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