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#20「ランランルンルン」
「iine、交換しませんか?」
何を言ったのか分からなかった。
頭が真っ白になり、今自分がなんで電車に乗っているのかすら分からなかった。
「すいません、もっかい聞いてもいいですか?」
「え?あ、あのiineを交換して欲しくて…、電車で会えない時でもやり取り出来たらいいなぁ…って思って。」
恥ずかしそうに言う進司に引子は頭の整理がつかなかったが、同時にこれを逃したら次は無いだろうと反射的に思ったので回らぬ頭で必死に答えた。
「あ、ありがとうございますあの、ぜひお、お願いします!!」
「良かったぁ…!電車もうすぐなので急いでやりましょう!」
言われるがままにiineを開き、あっという間に交換した。
「これから宜しくお願いしますねっ!」
「は、はい、こちらこそ…」
流れはどうであれ交換できたことがまだ信じられなくて、ただ呆然と相槌を打つことしか出来なかった。
「じゃあ、iineでやり取りしましょうねー!」
人の目も気にせず大きく手を振る進司を慌てて引子は振り返した。
「は、はい!宜しくお願いします!」
遠ざかっていく進司を引子はずっと見つめている。
すきま風が何処か心地よく引子の背中を流していった。
「ありがとう…進司さん。」
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