#5「おめぇ採用しねぇから!」

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#5「おめぇ採用しねぇから!」

「も、もうやりたくない…」 ゾンビの如く死んだ顔で重い足取りでリビングに向かう。 引子は冷蔵庫からビールを取り出した。 そこには見知らぬ豆腐と味噌があったが、また酔う前に買い、忘れたのだろうと気にもとめなかった。 引子は脳内反省会で忙しいのだ。 「この期間、何してたの?キッチンやりたいって言うけどさ、得意料理おにぎりってなに?他にもっとこう…料理らしいのないんですか?」 「正直言わせてもらうとね、人手が足りないとは言いましたけど、2年間ニート生活でした。料理もそこまで得意じゃありません。でもキッチンに着きたいので雇ってください、って人をはいそうですかと受け入れる訳にはいかないんだよ。」 荒い呼吸をビールで流し込み、携帯で動画を見始めた。 「ニート クズ」 汚らしい中年男性と後ろからその母であろう人物が言い合っている。 とても見ていられない罵詈雑言の言い合いに引子は大爆笑していた。 「ははははは!!!やば!どんだけ言うんだよコイツ!ぜってぇ自分の方がマシじゃん!っははは!!」 あたりめとチーズ鱈を取り出し、1人晩酌を始める。 最初こそ楽しげだったが、静かな雰囲気と今日の黒歴史に気圧され涙腺が耐えられなくなった。 夜空の向こうから差し込む光が、どこか暖かかった。
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