#7「マトモジャ・イラレ・ナイツ」

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#7「マトモジャ・イラレ・ナイツ」

「私は…後藤 引子(ごとう のぶこ)です。」 おずおずと答えた引子に進司は喜びを隠せずにこう言った。 「のぶこさん…やっと名前聞けました!」 電車には似合わない弾んだ声に乗客が一斉にこちらを見る。 「しっ!」 「あっすいません…。」 謝りながらも口角は上がったまま、進司は聞いた。 「漢字はなんて書くんですか?」 「え?あぁ引くに子供の子です。」 「ひくこ…なんか都市伝説でいませんでしたっけ?ひくこさんみたいな。」 えっそんな事わざわざ言う?と咄嗟に思った引子は黙りこくった。 この人はデリカシーがないんだ、早く降りたいとそう思った。 「す、すいませんまた失礼なことを…。ダメだなぁ…僕。でも素敵な名前だとは思いますよ。」 「お世辞なんてよして下さい。」 「違います!さっきは間違って言っちゃっただけで…」 しどろもどろになりながらも進司は続けた。 「助けを求める人を引っ張っていける子…って意味で引子さんのおかあさんがつけたのかなぁって。」 「あ…。」 フラッシュバックしたのは小学生の時の記憶だった。 (やーいひくこ!おまえのなまえへんなの! マジでひくわー!笑) 学校から家に場所が変わる。 (お母さん…なんでこんななまえなの?ぜんぜんかわいくないし、もっとちがうなまえがよかった…!!)
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