15人が本棚に入れています
本棚に追加
#8「大丈夫だ、問題しかない。」
1人座り込んで泣く幼い引子を光の向こうから男性の手が優しく引き込んで行き…。
引子は静かに電車内で泣いていた。
「あ、降りなきゃ…。あの、これ…。」
俯く引子の手に本とハンカチが渡された。
「また会った時にはいっぱい笑わせてみせます!」
少し寂しそうな顔の彼が扉で閉ざされる。
優しさが心を伝っていくようだった。
懐かしい店内で高校時代の友達と食事をしていた引子は気まずさを感じていた。
1年前に会った彼女とは比べ物にならないほどやつれており、かける言葉が見つからなかった。
「あんたさぁ…」
「私の事見下してんでしょ。変わったな〜コイツ、もう会うの辞めようかな〜って。」
「いや、そんな事は…。」
「いいよ正直に言って。言いたきゃ言えばいいじゃん。」
明らかに自分に対して当たりが強いと感じた引子は、なるべく刺激しないように言った。
「それはそれでいいと思うよ?私だって気持ちわかるしさ…。」
その瞬間友達は机を叩きつけた。
フォークが落ち、コップの中の水が波打つ。
戸惑う引子に歪んだ顔と声で友達は言い放った。
「そういうさぁ!薄っぺらいフォローがいっちばん腹立つんだよ!あたしの事なんかどうだっていいくせに擦り寄ってきやがって!あんただってニートのくせによくそんな余裕そうな顔できるよね!?ふざけんじゃねぇよ!!」
最初のコメントを投稿しよう!