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「やっぱ、大変だねー。子育てって。両親のありがたみが分かるわー」
翔太は生まれたばかりの赤ん坊をあやしながら、俺の前でそう言った。嫁の美玖さんはソファーに座って、そんな翔太を見ていた。
美玖さんは19歳。翔太と同級。化粧といい、髪の色といい、少しやんちゃだった面影が残っている。
「これからは俺の意思で父さんに会いに行く。もう子供じゃないから」
俺と郵便局で会った日、翔太は朱美にそう告げたらしい。朱美は特に何を言うでもなく、「そう」と言ったそうだ。
「父さん、琴音よろしく」
翔太はそう言って、俺に赤ん坊を預け、1つ背伸びをした。俺は慌てて、赤子を受け取り、慣れない手つきで抱いた。
琴音。俺の孫娘。あどけない顔で、すやすやと眠っている。
これからたくさんの苦労があるだろう。22で父親になった俺以上に。
でも、安心しな。じいちゃんがちゃんと守ってやる。何が何でも。命に代えても。
「お前にはいろいろと話しておかなきゃな。若くして父親になった俺の失敗談」
「はは。よろしく。じいちゃん」
翔太はそう言って、美玖さんの隣に腰かけくつろいだ。
俺は両腕に抱える新しい命のぬくもりを感じながら、まだ若い夫婦の背中を見守った。
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