うん。それでいいかも

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 簡素な遊具で遊ぶ翔太を眺めながら、俺はベンチに腰掛け、先ほど買ったコーヒーをひと口啜った。  いい1日だった。本当に。  いい時間だけ過ごしてる。翔太と過ごす1日の最後に、必ずそう思ってしまう。  一緒に生活を共にする父親なら、もっと違う面で子供と向き合っていることだろう。  時に厳しく、時に突き放す愛情もある。  俺にはそれができていない。できない。  月に1度だけ許された息子との時間。翔太にとって楽しい時間になってくれればいい。俺も、そんな時間を過ごしたい。  俺は父親失格なのだ。  仕方がない。自分で選んだ道なのだから。  遊具のてっぺんで手を振ってくる翔太に、右手を上げて応える。  取り付く島もない寂しさが、胸の中に渦巻く。
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