そりゃダメでしょ

2/8
前へ
/36ページ
次へ
 改札を出て、階段を下る。会社帰りのサラリーマンが、次々と足早に階段を下りていく。  家族の元へ帰るのだろう。同居人のいない俺は、それを横目にゆっくりと歩く。  左手にロータリーを見ながら、信号のない横断歩道を渡る。幸い車は来ていない。  しばらく歩くと右手にコンビニ。その先には大型のショッピングモール。既に閉店したショッピングモールの店内は暗く、何だか不気味だ。毎日見てるのに、毎回そう思う。  信号に引っ掛かり、しばし足止めを食らう。俺と似たようなサラリーマンが3人。  1人は携帯を見ている。3人に共通しているのは、どの顔も疲れ切った顔をしていること。  俺もそうなのか?たぶん、そうなのだろう。  信号機が青に変わったのを境に、俺を含めた4人のおっさん達は一斉に足を踏み出す。まるで競馬のゲートだ。  3人のおっさんの出足に負け、俺はおっさん達の背中を追いかける形で横断歩道を渡った。信号を渡ると1人は右へ、もう1人は左へと曲がった。  何も語ることなく、俺たちは別れた。  いつもの帰り道。いつもの光景。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加