海に行く

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 空が白んできた頃、コンビニに寄って飲み物を買った。この3日間、まともに食べて無かった胃袋に温かいお茶が染み込むのが分かった。  生きていると思った。  ただ、そこに喜びはなかった。  生きる目的を無くした今、なぜ海など見たくなったのだろう?  見ても何かが変わる訳でもない。  翔太と会える訳でもない。  それでも、ふと気持ちが動いた。  海を見たいって。  俺は再びエンジンをかけて、海へと車を走らせた。車は、まだ少なかった。  それから2時間。コンビニで買ったサンドイッチを食べながら、俺はハンドルを切った。  景色は移り変わったが、それには目も呉れず、機械的に運転した。  海に着くころにはすっかり夜は明け、キラキラした水面が揺れていた。  堤防のすぐ隣にはテトラポットが無造作に置かれ、その間を1か所だけ、海へと続く長い堤防が突き出していた。  すでに釣り人が数名、糸を垂らしていた。俺は海を見ながら、堤防を歩き、その先にある砂浜を目指した。
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