海に行く

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 堤防を歩くこと2分。俺は砂地に足を踏み入れた。  ずんという感覚とともに、足が砂に埋まった。その感触を確かめながら、海に相対している木陰を目指した。  ここは地元の人たちが利用する海浜公園で、夏には海水浴を楽しむ客で賑わう。今は時期外れなので、俺以外、誰もいなかった。  両膝を抱える形で木陰に座り、海を眺めた。波は穏やかに満ち引きを繰り返していた。  3日間、1日中カーテンを閉め切り、考えるでもなく暗闇の中で過ごした。  思い浮かぶのは翔太の映像ばかりだった。その都度、胃の辺りがキリリと痛んだが、そのままにしておいた。  こんなこと思い出しても仕方がない。それは分かっていても、翔太の映像は次々と浮かんでは消えた。  そして時々、朱美に対する憎悪も感じた。新しい相手でもできたのか?それで俺が邪魔になった?翔太が俺を慕い、新しい男を毛嫌いするのを恐れた?  ありえない話ではないし、その可能性は十分にあった。それが頭を()ぎるたび、憎しみの心が生まれた。  しかし結局たどり着くのは、全ては自分の蒔いた種という答えだった。
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