海を見つめる

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 1週間もすると、むしゃくしゃした。  こんなことをして、いったい何になる?無駄な時間を過ごしているだけなのではないか?  そんな思いばかりが、頭の中で渦巻いた。  悩んで迷って、自分に嫌気が差しても、俺はとりあえず海へと行き、いつもの木陰に座った。天気のよい穏やかな日は砂浜に座り、日光を浴びながら海と対面した。  頭に渦巻く否定的な考えはそのままに、ただただ海を見つめ、呼吸した。  海に出向いて10日が経った。  その日も俺は、いつもの時間に民宿を出て、海へと向かった。  自分のことばかり考えちゃいないか?  歩いている途中、そんな考えがふと頭を過ぎった。  朱美と別れた自分。翔太に会えない自分。そんな哀れな自分。  自分、自分って、どんだけ自分中心なんだよ。そんな自分に酔ってるだけなんじゃないか?  もしそうだとしたら、俺はとんでもない愚か者だ。悲劇のヒロイン?それを演じてるだけ?  バカバカしい。そんなバカが、俺か。  その日は風もなく、海は穏やかだった。  俺は初めて、その穏やかさに気づいた気がした。
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