海を見つめる

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 今まで、いかに自分のことばかり考えていたのか?それを1つ認めたことから始まった。  自分のわがままで離婚し、自分のわがままで翔太と会わせてもらい、それを断られると自暴自棄になり、引きこもる。  何やってんだ、俺は。  いくら自分の精神状態を保つためとは言え、あまりに子供じみた行動。それに気が付いた。  そして、考えた。これからのことを。  もう自分のことばかりを考えるのはやめだ。朱美と翔太の幸せを、心から願おう。  俺がいなくたっていいじゃないか。  新しい父親と幸せな家庭生活を送ることができれば、彼女たちが幸せならば、それでいいじゃないか。  海は今日も変わらず、波を打っている。  そこには自分もなく、他者もない。  寄せては還す。それだけ。  そんな自分になりたかった。いや、自分を消した存在になりたかった。  俺は1人、(さび)れた部屋に座り、目を閉じた。そして今日感じたことを頭のなかで反芻し、両手で頬を勢いよくひっぱたいた。
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