そして、生きる

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 あれから、朱美には連絡を取っていない。もちろん、翔太にも。  翔太への連絡は、いつも朱美経由だったから、翔太に直接連絡の仕様はないのだけど。  俺は淡々とした毎日を過ごしていた。  それでいいと思った。  いつもと同じ時間に出勤し、丁寧に仕事をこなし、定時になったら席を立つ。  たまには定時をすぎることもあるが、そこまで遅くなることはない。  ただ、翔太のことを忘れたことはなかった。忘れる訳がない。  学年が進級するとき、運動会が近づいたとき、夏休みに入るとき。  その都度、俺は翔太に必要なものを送った。そのときだけ、朱美にメッセージを送った。  既読にはなるも、返事はなかった。  荒らされたくない。壊されたくない。  そんな意図を感じた。  それでも俺は送り続けた。迷惑かもしれなかったが、それが唯一、俺に残された翔太との繋がり方だった。  送った品は送り返されることはなかった。受け取ってはくれているようだ。  紛れもない執着。  誰しも何かへの執着がないと、生きていけないのかもしれない。
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